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あとがき

委員会の歩みと今後の展望

 ウツタイン大阪プロジェクトが発足し、病院外心停止症例の記録集計が1998年5月から大阪府全域で開始されてから今年ですでに11年目に入ることになった。この度、ウツタイン大阪のホームページが公表されることになり、発足当初からこのプロジェクトに関わらせていただいた私としては、感慨もひとしおである。
 ウツタイン大阪プロジェクトは、もともとは今ある大阪府の委員会の前身である「蘇生に関する統計基準検討委員会」が発足させたプロジェクトで、大阪府の救命救急センターから錚々たるメンバーが集結して立ち上げたものである。しかしその実現までには様々な障害が立ちはだかり、私もその中の一メンバーとして苦労した思いを持っているが、今はそれも懐かしい思い出である。
 当プロジェクトが開始されてからの10年間は、病院前救護体制はまさに激動期であり、具体的には2003年4月には除細動の包括的指示実施、2004年9月には認定救命士による気管挿管実施、そして2006年4月には認定救命士による薬剤投与実施と、心停止症例に対する救急救命士による処置範囲は拡大の一途をたどっている。当プロジェクトでは、その激動期にあって単に心停止症例のデ-タ収集に留まらず、デ-タの詳細な解析を行い、大阪府における病院外心停止の特徴ならびに救急搬送システムの問題点を明確にしてきた。たとえば、当初は大阪府の救命士による除細動までの時間が大幅に遅延していることを指摘して、除細動にからむ問題点を明確にしてきたし、最近では人工呼吸を省略した市民による心肺蘇生法での生存率が従来の心肺蘇生法での生存率と遜色ないことを明確にした。そして特に人工呼吸を省略した心配蘇生法に関わるエビデンスは、次回のガイドライン策定の際には重要なエビデンスとして採用される可能性が高いと考えられる。
 今後の展望であるが、大阪府の公的な委員会として新たな委員会が発足した今、できるかぎりデータをオープンにした上で、皆様のご協力のもと、今後もさらに病院前救急医療について、体制変化の検証を実施していくことになろう。そしてその皆様による多大な検証の結果、新たなエビデンスが大阪に誕生することを期待する次第である。

済生会千里病院 千里救命救急センター
林 靖之