ウツタイン大阪プロジェクトで得られた知見(トピック)
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ウツタイン大阪プロジェクトで得られた基礎的データ

救命率

 ウツタイン大阪プロジェクトでは、救急隊の協力により救急活動に関わるいろいろなデータを記録集計しています。中でも、特に重要な記録の一つに転帰調査があります。これは、心停止になった人の心臓が再び動き出した(心拍再開)のか、1カ月以上生きていたのか、普段の生活ができる状態に回復しているのかなどの記録です。
  この記録は特に集めることが大変な情報です。年間5000例以上にものぼる大阪府下の病院外心停止症例について搬送に関わった救急隊が、搬送した病院、担当医に後日、連絡を取り一例一例確認しています。この項目が記録されなければ救命率の向上を考えることはできません。
  グラフの救命率は、倒れるところを目撃された※1心臓の病気が原因の心停止(成人)とその中でも救急隊が到着したときの心臓の状態(心電図)が心室細動※2であったものの二つについて示しています。両方とも救命率が、年々上昇していることが分かります。中でも電気ショックが有効である心室細動の例では、脳の機能が保たれて社会に復帰した方※3の割合が、記録開始当初の約3倍の17%と大きく改善していることが分かります。しかし、心室細動以外も含めると、倒れるところを目撃された心停止でも、社会復帰する割合は6%程度にとどまっています。さらに救命率を上げるために、その場に居合わせた人が心肺蘇生を行う割合を増やし、AEDを用いた除細動が速やかに行われるようにすることが必要と考えられます。
※1 目撃のある心停止
心臓突然死(病院外心停止)では、心臓が止まって倒れるところを目撃されることなく、しばらく時間が経過してから発見される場合も多いのですが、このような症例では時間との戦いである救命処置の効果を評価することは困難です。そのため、救命処置の効果を検証する時には、いつどのように倒れたかがわかっている症例について検討しています。
※2 心室細動
心臓突然死の多くは、心室細動と呼ばれる不整脈によって引き起こされます。心室細動になると、心臓の筋肉がばらばらに震え、ポンプとして血液を送り出すことができない状態=心停止となります。この心室細動から救命するためには、一刻も早く電気ショックを行う必要があります
※3 社会復帰
心停止から救命されたとしても、すべての方が障害なく元の生活ができるようになるとは限りません。心臓や他の臓器が元通りに動き出しても、脳の機能に障害が残ってしまうことがあるからです。心肺蘇生(救命処置)の最終目標は、脳の障害を残すことなく、元の生活に戻れるようにすることです。ウツタイン大阪では、脳の機能の記録を行う場合には、5つのカテゴリーに分けて記録を行っていますが、このなかで、カテゴリー1,2のものを社会復帰として、特に重要視しています。
カテゴリー1:意識障害、機能障害なし。
カテゴリー2:軽度~中等度の障害があるが、自立した生活を送ることが出来るもの。
カテゴリー3:高度の障害があり、生活に介助を必要とするもの。
カテゴリー4:昏睡状態もしくは植物状態。
カテゴリー5:死亡、もしくは脳死。
心原性かつ一般市民による目撃のあった症例の1ヵ月後生存率及び社会復帰率
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心原性かつ一般市民による目撃のあった症例の1ヵ月後生存率及び社会復帰率 初期心電図波形がVF又は無脈性VTであったもの